住む人も、街の人もうれしい住まいづくり。リノア北赤羽 設計者クロストーク

一棟まるごとリノベーションマンション「リノア北赤羽」。
設計やコンセプトメイキングに携わった7名による対談。


  • 千葉元生
    (ツバメアーキテクツ)

  • 岡佑亮
    (ツバメアーキテクツ)

  • 佐々木高之
    (アラキ+ササキアーキテクツ)

  • 渡辺友博
    (UG都市建築)

  • 小山 明
    (タシリンゴLLC クリエイティブ担当)

  • 尾崎洋甫
    (リビタ 企画・販売担当)

  • 山本裕文
    (リビタ 建築担当)

まちの広場のような、アクティビティが生まれる共有部

リノア北赤羽をどのように設計したのか、
事務所紹介もかねて教えてください。

僕らツバメアーキテクツは、デザインとラボという二つの部門をもっています。空間の設計をするデザインと同時に、そもそもどういう場所が求められているのかという空間の枠組みから考えるために、研究リサーチを行うラボがあります。今回は共用部のデザイン監修という立場で関わっています。

©Kenta Hasegawa

ツルガソネ保育所・特養通り抜けプロジェクト(2017)
特別養護老人ホームに付随する保育所を新設するプロジェクト。保育所をつくると同時に特養を通り抜けられる道をつくることで、閉じてしまいがちな福祉施設を開き、老人、近隣の高校生、児童たちが出会えるきっかけをつくっている。

リノア北赤羽は147戸という大規模なマンションで、300~400人が移り住みます。最初にこの数字を聞いたとき、北赤羽というまちの性格に影響を与える単位だと思いました。であるならば、ここの住人の暮らしとともにまちにも貢献できるような設計を考えようと。
特に重要だと考えたのは足元の境界面をなくすことです。そこで思い浮かべたのが、ロッジアという屋根付きの半屋外空間でした。イタリアではロッジアが、教会やパラッツォ(イタリアの宮殿)に付属していて、まちの人たちの憩いの場所になっています。リノア北赤羽でもまちに対して屋根をかけることで、まちに属しているのか建物に属しているのかわからない曖昧な場所をつくり、近所の人たちが気軽に立ち寄れる場所にしたいと考えました。また、そこに連続するように建物の内部にさまざまに利用できる共用部をつくりました。

ロッジアの例(千葉氏撮影)

「おおやね」イメージ図

具体的には、建物の正面の敷地は、塀をなくし、一部歩道をそのまま引き込んで広場のようにしました。ここではイベントやマルシェができるし、ガードレールを外せばキッチンカーも入れる。その上に大きなパーゴラ「おおやね」を架けていて、部分的に屋根だったり、オーニングを張れたり、植物を這わせたりと、下にいろんなアクティビティが生まれるようになっています。
建物内は1階にもともとあった集会室を、「シェアキッチン」やイベントができるカフェスペース「つながるま」にリノベーションしました。エントランスは隣接する管理人室と一体化し、大きなラウンジ「いどばたげんかん」にしました。ここは、子供が集まって宿題やゲームができるスペースや、洗濯機があって家事ができるスペースを設けています。家の機能が拡張したような場にしたかったんです。そこにいる人とエントランスを行き交う人とで、さりげないコミュニケーションが生まれるといいなと思っています。

ぜひここで何かイベントを開催してほしいですね。住人とまちの人とで少しでも接点があると、ぐっと距離が縮まると思います。共用部の名前がひらがなで、子供でもわかる表現なのも、親しみをもってもらえそうです。

11、12階には音が出せる部屋「おとのま」と集まれる部屋「あつまるま」をつくりました。ここは、騒音問題を考えると住戸内ではできない楽器演奏やダンス練習ができたり、大人数で集まったりできる場所で、家の機能を拡張させるような役割をします。
また「屋上デッキ」もあり、夏は複数の花火大会の花火が見られるんですよ(屋上は使用ルールを設け、みなさんが安心して利用できるようにする予定)。

過ごし方から発想し、部分的にデザインを選べる専用部

専有部の設計は何か特徴はありますか?

今回は、これまでのリノアシリーズの標準モデルに加えて、「暮らし発想リノベーション」というモデルも準備しています。このモデルは、リビタがいままで手掛けた2,500件以上のリノベーション事例から、「こんな暮らし方がしたい」というエッセンスを抽出して、部分的な空間をつくったものです。既にいくつかの分譲マンションのリノベーション事業でアラキ+ササキアーキテクツさんと一緒にやってきて、一棟リノベーションマンションは今回が初めての展開です。

暮らし発想リノベーション物件の例 「離・合・集・散」のふたり暮らし

暮らし発想リノベーション物件の例 無駄を贅沢(ぜいたく)に愉(たの)しむ、大人のひとり暮らし

アラキ+ササキアーキテクツでは、デザインのプロセスに実際に手を動かす「ハンズオンアプローチ」を取り入れています。具体的には現場で施工を行ったり家具をつくったり、モックアップという実物大の試作品を事務所でつくって、スケール感や素材、ディテールを検証しながら設計を進めることを大切にしています。
リノア北赤羽では、山本さんがお話したとおり、想定される住人の暮らし方をイメージして、「この場所でこんな風景が生まれる」という部分的なモデルを提案しています。例えば「見晴らしキッチン」は、キッチンが一段高くなっていて、DJブースみたいにリビングを見わたせる。「おこもりラウンジ」は、ソファとテレビの奥に仕切られた机があって、子供がゲームをする隣でお父さんが仕事をできる。その様子を、お母さんが見晴らしキッチンから見守る。こうした家族の風景をつくる発想で設計しました。
しかも、同じキッチンでも「いどばたキッチン」という選択肢もあります。キッチンの下に引き出しがついていて、出すと子供の踏み台になって、シンクを囲うように家族が一緒に料理できる。また、「あつまるデスク」は、収納型の天板を倒すことで、机を3つ並べられます。このように、複数のシーンから家での過ごし方を選べるんです。

家族内のコミュニケーションだけではなく、マンション内のコミュニケーションにもつながる仕掛けだと思います。例えば「あつまるデスク」は子供の友達が来て勉強したりお絵かきしたりしそうですよね。「いどばたキッチン」も、2世帯で餃子つくろうとか、イマジネーションがくすぐられるしつらえです。

共用部と専有部で設計者は異なりますが考え方は連続していると思いました。一般的な間取りのようにLDK、子供部屋、書斎とはっきり個室で区切ってしまうのではなく、個々のスペースが関係性をもてるようにプランニングされています。家族間、住人同士がつながりを持てるポイントをつくっている。これがさらに広がって地域の人ともつながれるようにと共有部の設計はおこなっています。

家では人数が多過ぎたり、スペースが足りなかったりしたら、共用部に行けばいい。2家族でパーティーするなら「いどばたキッチン」で、もっと増えるなら1階の「シェアキッチン」へ。スケールによって臨機応変に使い分けられますね。

ハードとソフト両方が機能するセキュリティ

UG都市建築は、都市と建築両方の分野で、調査や設計をしています。

柏の葉キャンパスシティプロジェクト(都市戦略構築・アーバンデザイン)

大崎ウェストシティタワーズ(基本構想・基本計画・建築設計)

新しい建物をつくるだけではなく、いまあるものを有効に活用していこうと、2014年にリノベーション部を立ち上げました。リノア北赤羽では、品質や法令、全体の計画をとりまとめる統括設計として関わっています。
いまの分譲マンションは一般的にセキュリティのために閉じようとする意識が強いのですが、リノア北赤羽は使われ方も考えていて、まちに対して開こうという姿勢が明らかに違います。

まちに開くからこそ、セキュリティをどのようにとるかという議論も相当しました。最終的には、1階の共用部はセキュリティとしては外側として、エレベーターの前で初めてセキュリティがかかるようにしました。

マンションに入ると、家事スペースで住人が洗濯しているのが見えて、「ただいま」「おかえりなさい」と挨拶を交わしたりできる。入口に人の目があるのは、建物とはまた違ったセキュリティになりますよね。「あの子一人で出ていったけど大丈夫?」とか、より柔軟なセキュリティです。

リノア北赤羽を中心にまちの暮らしが楽しくなる

リノア北赤羽が今後どんなマンションになっていってほしいか、イメージを聞かせてください。

共用部は、ランチどきは近隣で働く人たちがごはんを食べたり、放課後になったら子供たちが遊んだり、公園みたいに多様な人が来る場所になるといいですね。このエリアはカフェなどゆっくりできるスペースがあまりないので、集合住宅であるリノアがそういう役割を担えると、ここに住む人にとっても、地域の人にとっても面白い場所になっていくのではないかと思います。

シェアキッチンは窓からお菓子やコーヒーの店頭販売ができる。まちに対して直接売ることができるんです。地域の人も気軽に敷地内に入って、くつろげることを意図しています。また飲食業と菓子製造業の認可をとる予定で、一日単位でさまざまな出店ができるようになります。お気に入りの曜日とかできたら面白いですよね。中のカフェスペースは、半分はカーペット敷きの小上がりで、赤ちゃんを寝かせながらママがランチできたり、奥には「部室」と呼ぶ個室があって、コーヒー講座みたいなことをしてもいいですよね。1日を通していろんな使われ方がされる場所になるとよいですね。

日常的な空間でありながら、何かをやってみたい人がチャレンジできる場所にしたくて、ここは何度も意見交換をしましたね。シェアキッチンは外部の人にも貸し出すつもりです。日替わりで個性のある飲食店が出れば、まちにとっても魅力的な場所になるんじゃないかな。

マンションを買う世代が偏ると、40〜50年も経つとマンションがシニアばかりになってしまうことがあります。リノア北赤羽としてリノベーションされるのを機会に、多世代の方が住まうマンションになってほしいですね。専有部のプランはシニア層にも対応していますし、誰もが集える共用部があるので、例えばリタイアした国語の先生が子供に教えるなんてこともできますよね。

共用部で何かをしてみて、手応えをつかんだから実際に物件を借りて自分の店をかまえる動きが少しずつできてもいい。まちの人に「リノア北赤羽を中心に暮らしが楽しくなった」と感じてもらえるようになるのが、企画当初から抱いているイメージです。みなさんに考えてもらった計画が実現していくよう、引き続き試行錯誤していきたいです。

戻る